seed:アスラン*キラ(フレイ)
お前の心が揺れるなら、その度に抱き締めるよ。
お前の心が揺れるなら、その度に抱き締めるよ。
「キラ!」
今にも、闇に紛れてしまいそうな背中へ向かって声をかければ、肩に停まっていたトリィが飛び立ち、数拍の後、キラが振り返った。
「……また、来たんだ」
呆れを滲ませて、唇だけで笑う。
「お前が何も言わずに、居なくなるからだろう?」
駆け寄り、距離を詰めるが、キラは話の内容には興味がないとばかりに顔を逸らし、目だけでトリィを追った。俺には見せなかった微笑を浮かべて、おいで、と空へ手をのばす。
「キラ。頼むから、」
「じゃあ、言えばいいのかな?」
「何?」
「もう帰らない。そう言えば、アスランは此処には来ないの?」
「ッ、キラ!」
「冗談。言ってみただけだって。そんなに怒らないでよ」
ね、トリィ。と、いつの間にかキラの指に停まっていたトリィが、キラを見て小さく鳴くと、慣れた動作で肩へ移った。
(――っ)
声にならない声は、いつも咽喉の奥に引っかかっている。
俺はいつか、キラに言える日が来るのだろうか。こうして、繕うことに慣れ、誤魔化すことに長けてしまったお前の口から、望んでいるような答えが聞けるとは思えなかったけれど。
「さ、もう帰るんでしょ? 行こう」
そうやって、簡単に俺を促すくせに、自身はその場を動かず、振り返る。
その先に何が見えているのかは、わからないし、きっとわかってもやれない。キラがどんな思いでいるのか、どんな表情でいるのかさえ。
でも――知っていることなら、一つだけあるよ。
「……キラ」
大切な、俺にとってのただ一人の名を、慎重に口にしてキラの手を握りしめた。
未だ目線は戻らなかったが、確かに握り返してきた力を、今は信じたかった。
「帰ろう、キラ」
うん、と力なく頷いたキラの儚さに胸を締め付けられ、強く腕を引いた。
キラの肩に停まっていたトリィが、慌てて空へ飛んでいくが、構わずにキラの身体を抱き締める。そして、腕の中で身動ぎ一つせずにいるぬくもりを、ただ噛み締めた。
手遅れになってしまう前に、ぼやけそうな輪郭を取り戻したかったのだ。
「俺たちは……帰るんだ」
耳元に落とした声に、ぴく、と微かにキラの肩が揺れた。ぶらりと垂れていた手が、恐る恐る俺の服の裾を掴んだところで、ほうと息を吐き出す。
あすらん、と呼んだキラの声は、ひどく幼く、愛しく響いた。
一緒に帰ろう
( どうか おれの そばへ )
移転するにあたって、ページ内を整理してるんですが、アスキラフレを最後に書いたのが07年とか\(^o^)/ 書いてたつもりで書いてなかったことにびっくりして、来ました。文書いた後に、うんうん考えて【一緒に帰ろう】って題をつけたんですが、その瞬間【「二人」に帰ろう】って曲を思い出して悶えました。あれ、比呂ひかの曲だと思ってたけど、アスキラフレでもいけちゃうよ ね。アスキラ(幼少)を経て、キラフレを経た後のアス→←キラ→フレ。ちなみに一番がアスランで二番がキラ。あの曲はほんと名曲。すきだ。
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