おお振り : 和己*準太(未満)
欲しい言葉は、いつだって一つ。
欲しい言葉は、いつだって一つ。
「和さん、和さん。オレのこと、どう思いますか」
「どうって?」
「好き・大好き・愛してる、とか」
並べた選択肢に和さんは、ははっ、と肩を揺らして笑う。
取り合ってくれない様子に、つい唇を尖らせたところで、和さんが笑みを引っ込めた。
「好きだよ」
どきりとした。本当に、一瞬、だけ。
「和さん……それ、今オレが言った中じゃ、最低の選択肢なんすけど」
「そうか」
「はい」
「なら、普通、嫌い、どうでもいい、って選択肢でも付け足すか」
ほら、最低から四番目なら、そう悪くないだろう? そういう思いを感じとる。
だけど、そうじゃない。欲しいのは、そんなものじゃないんだ。
だって、そうじゃなきゃ……何か別の選択肢を付け足して“好き”という気持ちを底上げしなければいけないぐらい“愛している”なんて言葉は、ほど遠いのだと思い知らされる。
『お前は、和己のこと、なーんもわかっちゃいねえよ』
不意に、いつか慎吾さんに言われた言葉が蘇った。それが憎らしい。
だけど、オレは利央みたいにアホじゃない。わざわざそんなことを言われなくたって、わかっているつもりだ。
でも、だってそれでも、オレには彼しかいない。和さんのことしか、考えられない。
押し黙ったオレへ、静かな目が向けられる。それに気づくと、和さんが溜息に似た息を吐き出して、笑った。
「しょーがない。そこへ大嫌いも付け足してやるよ」
和さんがオレに言った好きという言葉が、また一つ最低から上がり、下から数えて五つ目になった。
でも、結局のところ何も変わっちゃいない。和さんの中のオレは、好き、の位置のまま。どうしたって、最高には手が届かないままだ。
「最高じゃなきゃ、意味、ないんです」
ぽつりと落とした声に、和さんが小さく反応する。
「どれだけ下に付け足したって、最高じゃないなら最低と一緒なんです」
だから――と、続けた声が震えた。
視界が揺らぎ、和さんの表情をうまく汲み取れない。
(愛してるって、言って――)
「好きだって言うくらいなら、大嫌いだって言って下さい」
「準太……」
「言って、」
「……ごめん」
は、と詰めていた息があふれた。
「和さん。それ、本当に最低の答え」
はは、と力ない笑みが口から零れる。行き場を失くした想いを表すように、それは生温い温度をしていた。
でも、どうしてなんでしょうね。和さんの口から、どんなに最低な言葉が放たれようとも、オレはあなたのことを嫌いになんてなれないんです。
オレの中のあなたは、どうしたって最高のまま。
変わらず、静かにこちらを見る和さんの唇は、重く閉ざされている。彼が再び言葉を口にする時、それは今日の終わりを意味していた。
だからオレは、その時をじっと待つ。
和さんがくれる終わりなら、受け入れられる気がするから。
「ごめんな、準太」
繰り返された最低の言葉を、どうかあなたの心にも刻み付けて。
今度は俺が、和さんにとっての、最低の言葉を口にするから。
いっそ、嫌悪してくれれば いい。
「でもオレは、そんな和さんのことも――愛しています よ」
最低の言葉
( 残響は脆く、腐敗する )
ずるい和さんが書きたかった模様。ずるいっていうかなんていうか。うん、なんだろうね。ただ和さんがかわいそうなだけの話になった\(^o^)/私の中の和準ってなんだろう。素敵サイト様でらぶらぶ和準読むの好きなんだけどなああ。私が書くと何故か^H^でも一応和←準じゃない。一方通行じゃない。和さんも準太のこと好きだよ!でもうちの準太が重過ぎるだけだよ(!)そのせいで和準未満なだけです(…)すまない。
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