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seed : アスランとラクスとキラと、

 ねえ、お前は、貴女は、いつからそんなにもがき苦しんでいたの。
 浮かべた微笑の裏で。誰にも、何にも言えずに。

「愛している、とおっしゃいますの」

「……は?」
「キラのことですわ」
「……はぁ」
 これは何だろう。俺は今惚気られているのだろうか、と首を捻ったところで、ラクスが小さく笑った。

「誤解なさらないで下さいな。わたくしのことだけではなく、貴方やカガリさんのことも含めて、ですわ」
「……キラが、そう?」
「ええ。みんなみんな愛しているよ、と笑うのです」
 アスランは御存知なかったようですわね、とラクスが呟く。
 他意はなかったにせよ、除け者にされているような気分に陥り、無意識にムッとすれば、彼女はおかしそうに目を細めた。
 相変わらず、全てを見透かされている気分だ。

「貴方は幸せですわね、アスラン」
「何を、」
「キラの心の闇を、知らないままでいられるのですから」
 思わぬ言葉に目を瞠り、心の闇、と静かに反芻させた。
 キラ の こころ の やみ?
 そこまで言うぐらいなのだから、当然ラクスは知っているのだろう。
 でも、本当に、ラクスは知っているのだろうか。知ったつもりになっているだけではないのだろうか。そう考えてしまうのは、多分、醜い嫉妬心のせいだ。心の奥底、未だにどこかで燻り続けている、しつこいやつ。

 顰めた俺の顔を眺め、アスランはどう思われるのかわかりませんが、と前置きをしてから、ラクスはそっと目を伏せる。
「わたくしは、こんなにも悲しい“愛している”という言葉を、聞いたことがありません」
 長い睫が、今にも泣きそうに震えていた。

 ちょっと待ってくれ。
 話の展開についていけない。これは、一体、何の、話だった?
 俺の表情を読み取りでもしたのか、ラクスは一度ゆっくりと目を閉じた。
 一拍、二拍、三拍目で、瞳が開く。
 仕切り直し、だ。

「キラは、とても悲しんでいらっしゃいます」

 ふ、と脳裏にキラの儚い微笑が浮かんだ。幼い頃には想像も出来なかった、消え入りそうな姿。ふらりとどこかへ行ってしまいそうな、危うさ。
 ごくり、と知らず咽喉が鳴る。
 心の闇と言ったラクスの声が、繰り返し、繰り返し、耳元に注がれる。

「ねえ、アスラン。わたくしは、一体どうすれば良かったのでしょう」
 胸元で祈るように手が組まれた。
 それに対する答えなど、俺が持ち合わせているはずもなく、あえぐように言いたくもない言葉を口にのせる。
「……貴女、も キラを愛せば、それで、」
「それでは、駄目なのです」
 間を置かず、否定されてしまった。

「何故?」
 心から問えば、キラは……、と初めてラクスが言葉を痞えさせたので、続く言葉を恐れた。
 そしてそれは、きっと間違っていなかった。


「みんなを愛してはいるけれど、僕が愛されたかったのはたった一人だけなのだと、彼女を想って泣くのです。涙を零さず、泣くのです」
 だからそれでは駄目なのです、と震える声でラクスが呟くのを聞きながら、泣いているのは貴女だ、と言えないまま口を噤んだ。


 やはり、キラとラクスはどこか似ているのかもしれない。
 今ばかりは、それを羨む気持ちは湧いてこないものの、心は揺れてしまう。
「ラクス……」
 涙を零さずに泣く姿を、初めて目の当たりにしながら“愛”という言葉について考えてみた。
 考えてみたとて、疎い俺は圧倒されるばかりだ。二人のいう“愛”など、とうに理解を超えている。愛とは、そんなに苦しいものだったか。そんなにも辛く、押し潰されてしまいそうなものだったの か。
 俺は、こんなにも重い 愛 という言葉があるだなんて、知らなかった。
 知らなかったよ。

 ――ごめんな。

 愛だなんて言葉を語るには、きっと俺はまだまだなんだろうけど、それでも、
 キラのことも、貴女のことも、俺は“好き”ですよ。
 俺を愛すキラも愛さないキラも、俺を愛す貴女も愛さない貴女も、好きです。
 それだけは確かで、ねえ、それじゃあだめかな。



 思いながら、結局何も言い出せずに、おずおずとハンカチを差し出した。
 そんなことしか出来ない俺を、変わらないと言って。どうか 笑って。



何があっても変わらないことを
( おそれないで 微笑んで  )




何が書きたかったんだろう?^o^とりあえず、この三人も好きです主張(…)まあ、うちのキラは相変わらずですが。

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