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corda:土浦(→)←加地

  【気づかないでいいよ】→【それで、満足か】→【思い知ってよ】の続き

  結局続いたっていう\(^o^)/あれれー


  確信は過ちで、探すほどに見失い、強い気持ちの分だけ捩れて伝わる。
  ああ、早く “俺” を かえしてくれ。



  加地が血迷った時、俺は現状を理解するのに手間取った。と、いうより、脳が理解を拒んだに違いない。
  舌を入れられそうになり、気づいた時には足が出ていた。俺の両頬を固定していた加地の手を振り払い、慌てて身体を離す。
「っ、急所を狙わなかっただけ、有り難く思うんだな!」
  吐き捨て、ブレザーの袖で乱暴に唇を拭う、その瞬間。確かに加地は、俺を見ていた。緩く持ち上げられた唇が歪み、読めない瞳で笑う危うさに背筋が冷える。
  しまった――と、一瞬でも己の行動を悔いたことには、自分でも驚くしかなかった。

  気がつくと、加地は腹部を押さえ、その場にしゃがみこんでいた。俺とそう変わらない身体を小さく丸め、うずくまる姿を見下ろしながら違和感の残る唇を噛みしめる。
  蹴ったことに関しては、全く! これっぽっちも! 罪悪感はなかった。どう考えても自業自得としか思えないし、言った通り急所を狙わなかっただけ感謝してもらいたいぐらいだった。
  なのに何故か。本当に何故か、心の端に引っかかる、ちっぽけなおもい。

『嫌いじゃない』

  この言葉が、キスへの引き金になったのならば、俺にも非はあったのかもしれない。
  “嫌い”という言葉を選べず、好きには届かない思いを“好き”という分類で括ってしまうことも出来ず。結局、好きでも嫌いでもない、第三の答を選んでしまった。受け入れる気などないくせに、嫌いよりいくらか希望が残る言葉を。捨てきれない、言葉 を。
  だから、加地は怒ったのだろうか。
  例え、嫌いじゃないというのが本心であったとしても、俺は“嫌い”だと言ってやらなければならなかったのだろうか。それが、嘘をつくことに繋がっても、加地を慮るなら?
  いや――“好き”と、言ってやれないのな ら。

(……だけど、)
  どろり、と脳内を支配するのは、身勝手な思考だった。
  自分の都合の良いように、良いように、捩曲げられた世界。
  そこから、目を 逸らした。
  ――俺はまだ、性懲りもなくもがいている。



  膝が、妙に疼いた。
  対象がボールではなく、他人の身体だったからかもしれない。仕方がないので、加地が立ち上がった暁にはもう一発蹴ってやろうと思案し、心を落ち着けながらその時を待っていたのだが、奴はぴくりとも動こうとしなかった。
  じっと待っているのも、そろそろ限界にきている。
(つか、……もしかし、なくとも……俺が悪いようになってないか。これ)
  思いきり不本意ではあるが、誰かに見られでもしたら、俺が虐めているようにしか見えないに違いない。

「お、おい!」
  加地の前で中腰になり、恐る恐る肩を揺さぶる。咄嗟のことで力加減が出来なかったのは認めるが、そこまで強く蹴ったつもりはなかった。ぶつぶつと口から零れる文句のような言葉にも、一切反応をみせない加地を見て、更に強く肩を揺さぶる。
  まず、顔を上げさせるべきだろうか。だが、それはそれで身の危険を感じるわけで、少し躊躇う。もう一度、こいつがキスでもしかけてきたら、かわす自信はある。不意打ちをつかれたとしても、蹴るなり何なりして突き飛ばすことも、絞めることだって出来ると思っている。
  でも――最後に見た加地の表情が、こびりついて剥がれなかった。
  何らかの感情を削ぎ落とした瞳に囚われて、とるべき行動に迷いが生じる。身動きが出来なくなる。

  そう、うだうだと考えこんでいると、唐突に加地が何事かを呟いた。
  聞き逃してもおかしくないほど掠れた声は、けれど何の因果か、俺の耳へ届けられる。


「  ごめんね  」


  揺さぶっていた手が止まった。
  凝視した先、やはり加地は動かない。

  ――お前、何に謝ってんの。

  無意識に奥歯を噛み締める。強く、痛いぐらいに。そうでもしなければ、感情のまま罵声を浴びせてしまいそうだった。
(こんな……こんな謝罪一つで、終わらせようってか?)
  忌ま忌ましげに歪めた唇から、自分のものではない他人の温度と感触が蘇り、顔を顰める。もう一度、今度は感触など忘れるほど唇を拭おうとしたところで、何故か 手が止まった。
  拭った瞬間に見た加地の様子に、先程の『ごめんね』。ついでに『好き』と言われた時のことまでもが、浮かんでは消え、浮かんでは 消え。
  そうなると、もう止まらなかった。そんなもん、知ったこっちゃねえ! と思う気持ちとは裏腹に、脳裏を過ぎるのは馬鹿みたいに加地のことばかりだ。
  へらへらと笑う姿に、切なげに揺れる瞳、下手くそな笑顔、思い詰めた表情、次々と切り替わるそこに――コイツの、心からの笑顔は見つけられなかった。

  愕然とする。
  記憶の引き出しから見つけられなかったことにではない。心から笑ったら、一体加地がどんな表情を浮かべるのかを気にしてしまった自分に対して、だ。
(嘘だろ)
  容易に認められるようなことではない。認めたくもない。
  だって、そうだろう ?



「……あー、もう」
  行き場のない思いが情けない言葉となって口から飛び出すと、漸く加地の肩がぴくりと動いた。肩の上に置いたままだった手でもう一度揺さぶると、噛み締めるように名を呼びつける。
  だが、加地は頑なに拒むばかりだった。顔をあげないどころか、いやいやと頭を振り、膝を強く抱きしめている姿は、先程よりも縮こまっているように見える。
(まさかこいつ、泣いてたりしねぇだろうな)
  恐ろしい想像に顔を引き攣らせながら、もうなりふりかまっていられないと、強引に顔を上げさせることにした。
  抵抗は受けたが、どうにか顔を覗き込むことに成功する。心底情けない顔ではあるが、泣いてはいない。まず、そこでほっとした。
(だよな、むしろ泣きたいのは俺の方だ!)
  誰にともなく胸中で呟き、むしゃくしゃしたまま、加地の頭を一発はたく。
  だが、声一つあげない加地を見て、自分の方が悪いことをしたように思えるのだから、堪らない!

「加地っ」
  痛みの残る顔を、ふい、と逸らされる。
「おい、こっち向けって」
  先の見えない攻防に苛立ちが募り、力任せに両頬を挟みこむ。
  どこかでみた光景だな、と頬を引き攣らせたところで加地の碧色の瞳が潤み、ぼろり、と涙が零れ落ちていった。
(な、泣いた――!?)
  恐れていたことが現実のものとなり、頭の中が真っ白になる。呼吸すら忘れて、固まってしまった身体。

  何も考えられずにいた俺の手は力なく振り払われる。行き場を失った手が、再度拠りどころを求めるように加地の手首を掴むのを、他人事のように見ていた。
  驚きに見開かれる碧の瞳。それを認識した後で、自分も驚く。
  本当に無意識だったのだ。
  これは、とか何とか言い訳めいた言葉が喉まで上がってきたが、結局声になることはなかった。何も言わない俺から視線を外した加地には、ありありと困惑が見てとれる。言葉にもならない様子で顔をくしゃくしゃにし、涙する加地を見て、少し、おかしな気分になっていることに気がついた。
  どくどくと脈打つ心臓の音がうるさい。耳鳴りは止まず、渇きばかりを訴えてくる。
  潤いを欲するように下唇を舐めとると、喘ぐように口を押し開いた。


  ああ、きっと。
  自身の中にある触れてはいけない何かに、触れてしまったのだ。




本心なんてもんは
( 本当に、碌なもんじゃ ない )



もう続かないとか言っといて、ほんとすみませんorz 唐突に、つちかじでくっついた後(っていっても大学生ぐらい?)のいちゃいちゃな二人の話が浮かんだので、もうちょっと続けてみることにしました。最初もやもやしてたほうが、くっついた後の幸せに浸れるよねとか…うん…(´p`) 一応展開は頭の中にあるのですが、それが文章に出来るか否かが問題なわけで(´・ω・`) ていうか、今回もほとんど進んでないしね!\(^p^)/あー。でも結構土浦の心を強引に加地へ向けさせたのは自覚してるっていう(…) 多分、次で動く……はず。
これも全部、つちかじ記事に拍手下さった方のおかげです。ご期待に副えるような話にはならないと思いますが、ぶるぶる。ありがとうございました…!

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