おお振り:島崎*利央
この人の頭の中は、一体どうなっているのだろう。と 思うことが、よくある。
この人の頭の中は、一体どうなっているのだろう。と 思うことが、よくある。
例えば、慎吾さんの頭を、ぱかんと割ってみたとしても、そこに望むものは何一つないと知っている。同じように、彼の心がわからないと言って胸を引き裂いたとしても、望むものは得られない。やってみたことがないので絶対とは言いきれないけど、そのはずだ。
願望か妄想か、判別のつかないものばかり頭の中を巡る。巡る。そういう物騒な思考だって、慎吾さんには伝わらない。彼の思考が、オレに伝わらないのと同じく。
それは、果たして良いことなのだろうか。今のオレには、わからない。判断がつかない。でも、悪いこと、ではないはずだ。
……たぶん。
――ガツン。
突然、鈍い音と共に思考回路が切断された。
ずらずらと考えていた下らないことの数々が、真っ白に塗り潰され、残ったのは後頭部の痛みだけ。声になりきらなかった吐息が口から溢れ、反射的に後頭部を手でおさえた。それで痛みが引くわけではないけれど、そうせずにはいられなかった。
「なに、考えてんだ?」
響いたのは、低く落ち着いた声だ。先程までオレの思考を埋め尽くしてくれていた人の、声。
呆れがめいっぱい含まれているように思えるのが、オレの気のせいであれば、どんなに良かっただろう。
オレはいつも、叶わないことばかり願っている。
痛みの引いてきた後頭部を名残惜しげに一撫でして手を離すと、目の前で腕を組んでオレを見上げる彼に、焦点を合わせた。
「あなたの頭の中について、考えてました」
答えをきいた彼の表情が妙なものだったので、ついでに心の中の方も、と付け足したが、問題はそんなことではなかったのだろう。
顰められた顔から伺える感情は、とてもわかりやすい。細かいことは推測出来ないが、大まかなことなら漠然と把握することが出来る。
「俺は、お前の頭の中が心配だよ」
ついでに心の方もな、と付け足された言葉に、へらりと笑った。
哀れむような眼差しが、いっそ清々しいと思った。
理解には程遠い
( それでも、あきらめきれない ねがいがある )
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