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corda:土浦(→)←加地

  【気づかないでいいよ】→【それで、満足か】→【思い知ってよ】→【本心なんてもんは
  の続き

  いつぶりだよっていう\(^o^)/

  もう何も見たくはないと、あふれさせた水で視界を覆った。
  ぼろり、ぼろり。頬を滑り落ちていくのは涙で、剥がれ落ちていったの  は、



  掴まれた手が、か細い悲鳴をあげる。
  振り払ってなお、僕を引き止める土浦の力強さにただただ動揺し、改めて彼を見上げれば、本人こそが自分の行動に驚いているようだった。
  心の底で擡げ始めていた期待に、また、気がつく。
  “もしかしたら”が消えない。その事実こそが、たまらなく恐ろしく思えた。
「……ぁ、」
  ぐらり、と足場が揺れるような感覚。暫く、しゃがんだ体勢でいたせいだろうか、思わず片膝をついた。ぐるぐる、ぐるぐると、回るのは目玉か、頭か。惑う思考は一向にまとまりをみせず、次の一手を決めきれない。

  そうこうしているうち、僕の目は、ふと神妙な顔つきになった土浦をとらえた。掴む手に力をこめられ、反射で肩が跳ねる。
  何か、強い思いを秘めた瞳に真っ直ぐ見つめられ、身動きが出来なくなった。閉ざされていた唇がゆっくりと開く様を、ただ見ているしか。
  ――それこそ、断罪を待つ咎人のように。

「加地」
  今まで聞いた覚えのない響き。そこに、ぎゅう、と込められた感情が何かを理解する前に、目を閉じる。
  我慢――出来たのはそこまでだ。
  一言目を誤った土浦が悪いと、また彼のせいにして、胸を塞ぐばかりの空気の塊を静かに吐き出す。

「俺は、」
  続く言葉を封じるように身を乗り出すと、空いていた手で土浦の口を覆った。掌に感じる唇の動きに、柔らかな感触。そこから無理やり意識を逸らし、掴まれていた手を渾身の力を込めて、振り払う。もう二度と、掴みなおされることのないように、強く。
  そして解けた手にほっとする間も惜しみ、口元を覆った手で彼を押しやると、足をもつれさせるようにして、数歩後ろに下がった。
(この好機を逃すものか)
  震えそうになる足をどうにか使い、身体を半転させて走り出す。よろけて手をついた、その数秒さえ今は惜しい。

「加地!」

  びりびりと響くかのような声を背中で聞き、決して後ろを振り向くことなく、がむしゃらに走った。土浦の足が速いことはよく知っているたから、躓きそうになる足を叱咤して、追いつかれないよう、ひたすらに、前へ、前へ。

  何もかもを置いて、逃げ出してしまいたかった。
  土浦も、数分前の僕も、この感情も、すべて。




  正門前まで来たところで、ようやく周りを見る余裕が生まれた。
  下校する生徒たちで賑わう場所に、酷く不釣合いな自分に気づいて、速度を落とす。涙に濡れる顔を手早く袖で拭い、荒い息を整えようと胸元に手をやる。不躾な視線をちくちくと感じながらも、それらを気づかぬふりでやり過ごした。
  足を止め、深呼吸を一つ。
  おそるおそる振り返った、そこに、土浦の姿はない。ただ、不思議そうな顔をした星奏の生徒がいるだけだ。

  誰とも知らぬ人物と、ぱちりと目がかち合った途端、羞恥に襲われ、人目を避けながら歩き出すと、手短な場所に腰を下ろした。肌寒くなってきた季節でありながら、身体中が熱の膜に覆われているような感覚。喉元に手をやり、引き攣った咳をする。
  走ったせいだけではない鼓動の速さが苦しい。自身の身体のどこもかもを掻き毟りたくなる衝動を抑えつけて、項垂れる。

「……僕、は、」

  ――また、何を期待した。
  脳裏に響く声にハッとする。
  ――振り返った瞬間、何を思った。
  何を望んだのか言ってみろとばかりに嘲笑う声へ、やめろ、と叫ぶ。
  だけど、心の声は止まなかった。厭らしく響く言葉の羅列が、じわりじわりと僕の心を追い詰め、締め上げていく。 
「やめて……くれ、」
  頭を抱え、背中を丸めた、その時。


「加地?」
  聞こえた低い声に、思考が止まった。


  ぎぎぎ、と鈍い音がしそうな動作で顔をあげる。
  チカ、と一瞬光った視界の先に見つけたのは――普通科の制服を着た生徒だった。
(確か、同じ学年の。そう、名前は……何だっけ)
  今この胸に宿る感情が、落胆なのか、安堵なのか、わからぬままに笑みを浮かべる。
  ――ああ、全く。こんなことばかり器用で困る。

「あれ、どうかした?」
  考える前に動いていた口。え、ああ、と口ごもる姿を見て、徐々に心が落ち着きを取り戻していくのがわかる。
「や、お前、具合悪いのかと思ってさ。んなとこで頭抱えて、大丈夫なのか?」
  心配、よりいくらか困惑に傾いている彼の表情を見ながら、うん、と頷く。
「ちょっと昨日夜更かししちゃったせいで、眠いだけ。ちょっと身体動かしてみたりもしたんだけど、さっきから欠伸もとまらなくてさ。帰ろうかどうしようか、迷ってたとこ」
  あーあ、とのびをして、両手で顔を擦ってみせたところで、漸く目の前の彼は、ほっとした表情を見せた。
「……そか、あんま無理すんなよ」
  じゃあな。ひらりと手を振った彼の背中へ、少しばかりの感謝を込めて手を振り返してから、やっぱり思い出せない名前に少しだけ頭を悩ませたけれど、まあいいや、と気にするのをやめた。

  こんな風に、土浦のことも“まあいいや”ですませられれば良かったのに。そんなつまらないことを考えて、天に向かって息を吐き出す。
  もしも吐き出したのが唾だったなら、僕の顔にかかっていたのだろうなとぼんやり考える。そういう風に思い知ればよかったのかな、なんて。
  ふざけたことを思いついたものだと、そう、思ったはずなのに。全然、笑えないことに気がついた。

  思い知るべきなのかもしれない。
  僕の持つこの感情が、悪意でなく好意だったとしても、彼にしてみれば悪意とそう変わりないものだったかもしれないし、それ以上に性質の悪いものだったのかもしれないのだから。
  いや、どちらかといえば、その可能性の方が高い気がする。
(……だから、こそ)
  そう思って、決意を固め拳を握り締めると、口の中に溜まり始めた唾液を、天へ吐こうと、して――ごくり、と飲み込んだ。
  飲み込んで、しまった。

  のどが あえぐ。
  もう、乾いた笑みの一つも浮かんではこない。


  やっぱり僕は、いつまで経っても 弱いまま だ。




よわむしけむし
( は さ ん で 、 捨 て た い )



公開したつもりで非公開になってました/(^o^)\あれれ~。そしてこの題名の酷さである^▽^というか本当に久々すぎてびっくりしますね!これ自体はずっと前に書きあがってたんですが、なんというかうん。遅くなりました。もう忘れ去られてますよね。どんなだっけって前の読まれても精神的に辛いのですが^q^とりあえずどうにかして終わらせたい。゚(゚^▽^゚)゚。 本当はこの加地視点倍ほど続く予定だったんですが、日野さん出すか出すまいかで散々悩んでかけてません。わあ。出さなくても話進むんだったら出さなくてもいいかなあと思いつつ(その分長くなるし)でもなんとなくつちかじに日野さんを絡めたいとか思ってる自分もいる。でもそうなると日野さんと付き合ってる人の話題が出るわけで(ループ)そういうの嫌な方いるだろうなともだもだ。好き勝手やってるくせにね。この今更感。あー!心底めんどくさい加地を描きたい。けどまだ足りない気がs))`ν゜);・ 加地と加地ファンに土下座ですね、すみません。

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